柴胡桂枝湯の加味方が奏効した尋常性乾癬(瞑眩と兄弟と)

患者は54歳、男性。約1年前から足背に皮疹が出現し、近くの皮膚科を受診したが、軽快せず、他に約6ヶ所の有名な病院の皮膚科を受診したが、どこもステロイドの塗り薬を処方するだけで、根本的には改善を認めず、皮疹は全身に出現するようになっていた。当院で重篤な尋常性乾癬を治すことの出来た実弟に連れられて、2001年4月13日同院に来院した。
身長168cm、体重63kg、脈はやや沈・小・弱、腹部は腹力中等度、胸脇苦満は軽度、両腹直筋の攣急も軽度、圧痛点なし。甘い物はそれほど食べないが、肉類は好きであり、また果物が大好きで、更にお煎餅も好物であった。初診時の皮膚所見としては乾湿中等度で、全身に発疹を認めるが、ステロイド塗布の影響で、皮疹の程度は一見軽度な印象であった。証に従って柴胡桂枝湯加黄耆を与え、ステロイド剤も含めて、皮膚科からの薬は出来るだけやめてみることにしてもらった。2週間後は、皮疹は増悪していたが、ステロイドのリバウンドのためと判断し、同じ薬方を継続していったところ、約5週間後は個々の皮疹は更に一層ひろがって、全体としては増悪した印象であった。しかし、同一薬方を継続して服用してもらったところ、その後は著しく改善し、初診時から約5ヶ月経過した時点ではほぼ完治した。それから、2ヶ月後に来院した際、皮疹が少し出現していた。この間、栗、柿、バナナ、ピーナッツなどを多量に摂取していたとのことであった。食生活の改善が大事であることを説明し、同一薬方を処方したところ、それから4ヶ月後に来院した時点で、完治した状態を確認できた。
この症例の一過性の増悪も前回(2月号の症例)と同様、瞑眩(めんけん)であった可能性がある。
腹 部 背中上部 背中下部 下 肢
左上腕部 右大腿部 右下退部 右上胸部

初診時 2001.04.13
約2週間後 2001.04.27
約1ヶ月後 2001.05.18
約5ヶ月後 2001.09.17
約5ヶ月後 2002.01.11

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